2016/10/08

小児へのDexmedetomidineの使用とその限界についてのレビュー。

Dexmedetomidine: review, update, and future considerations of paedeatric perioperative and periprocedural applications and limitations.
M.Mahmoud  and K.P.Mason. Br. J. Anaesth. (2015) 115 (2):171-182.


小児へのDexmedetomidine(DEX)の使用とその限界に焦点をあてたレビュー。
【DEXの特徴】
理想的な麻酔薬は次のような特徴のあるものである。
速い作用発現・消失、反応が予測しやすい、調節が容易、鎮静作用に信頼性がある、気道の緊張を保持できる、呼吸抑制が軽度である。
DEXはこのうち幾つかに当てはまる。また、神経保護作用、アポトーシス減少の報告もある。
活性あるいは毒性をもつ代謝物はない。
作用機序:青斑核のα2アドレナリン受容体への作用を通じて、最小の呼吸抑制で自然な睡眠に類似した比較的速い鎮静作用を発現する。
血中濃度上昇に伴う二相性の血圧変化:1μg/l以上になると、軽度な血圧低下から血圧上昇に転じる。

【術前使用(抗不安薬)】
鼻腔内投与(1μg/kg)の鎮静作用発現時間:25分(中間値)、作用持続時間:85分(中間値)
MDZと比較して、より良い鎮静効果、抗不安作用、スムーズなマスク導入、より少ない心血管系への影響が報告されている。
作用発現に時間がかかるため、適切な用量の設定など、今後の研究が必要。

【術中使用】
OSASの小児でも高用量(3μg/kg/hr)で気道開通性と緊張を維持できた。
脊椎後方固定術でのプロポフォール必要量の軽減、術中wake-upテストの促進が可能。
awake craniotomyでの有用性。
局所麻酔薬の効果を高める。

【回復期使用】
セボフルランまたはデスフルランで麻酔した小児の不穏を予防する効果あり。
0.5μg/kgで術後シバリングを5分以内に消失させた。
術中のDEXの使用が、術後のペインスコアとモルヒネ使用量を減少させた。

【腎臓への影響】
バゾプレッシン分泌抑制:腎血流量・糸球体濾過量増加
造影剤による腎障害に対する保護作用があった。

【今後の検討】
臓器保護作用を持つことが示されており、さらなる研究が進められる可能性がある。
小児での記憶力、健忘への影響に関する文献はこれまでにはない。
小児期でのDEXへの曝露と長期間の神経認知機能との関連性についてさらなる研究が必要である。

0 件のコメント: