2015/11/22

メトクロプラミドはPONVに有効か?

postoperative nausea and vomitting(PONV)は患者満足度を下げ、術後の回復を遅延させる可能性がある。
PONVの危険因子としては患者因子(女性、非喫煙者、PONV/動揺病歴)、麻酔因子(揮発性麻酔薬、亜酸化窒素、術中・術後のオピオイドの使用)、手術因子(手術時間、手術の種類)などが挙げられる。
Apfel scoreでは、女性・非喫煙者・PONV歴・術後オピオイド使用に当てはまる数が増えるにつれ、PONVの発生頻度が20%ずつ増加すると言われている。

【嘔吐の生理】
嘔吐中枢は延髄網様体にあり、以下の5種類の求心性刺激により嘔吐が起きる。
・セロトニンにより活性化される迷走神経を介する経路。
・前庭迷路系から第Ⅷ脳神経を介する経路。
・視覚中枢からの経路。
・心理的要因など辺縁系を介する経路。
・延髄最後野にある化学受容器引金帯(CTZ;chemoreceptor trigger zone)を介する経路。

【制吐薬】
中枢性と末梢性制吐薬がある。
欧米などのPONV予防ガイドラインでは多くの制吐薬の使用が認められているが、日本で保険適応にされているものは数種類しかない。
日本でPONVに用いられる代表的な制吐薬としてメトクロプラミドがある。




【メトクロプラミド】
中枢性・末梢性制吐薬。
薬価も安価(10mg1Aで57円)で、通常使用量(10mg)では副作用(錐体外路症状等)の問題もほとんど認められない。
BJAにあがっているReviewによると、メトクロプラミド10mg単回投与は術後24時間のPONV予防に有用であることが示された。
メトクロプラミドのnumber needed to treat(NNT)は、PON:7.1、POV:8.3。
これはオンダンセトロン(POV:NNT6、PON:NNT7)やデキサメタゾン(NNT4)と比べて、そう劣っているとも言えない数字である。
PONV高リスク患者に対し、積極的に予防投与しても良いのかもしれない。